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25.12.02
TOKK編集部
創刊50年を超える阪急沿線情報紙TOKKと、WEBメディア・TOKK関西を運営しています。

活気あふれる大阪・梅田の中心地に、昭和の風情を色濃く残す「新梅田食道街」。その一角にある「お好み焼 きじ 本店」は、高架下の路地にひしめき合う数多の店のなかでも来客が絶えない名物店です。
常連客から、新梅田食道街のマスコット的存在と慕われている店主が自然体でつくるお好み焼は、昔ながらの素朴でしっかりした風味と食感。カウンターに長く敷かれた鉄板で次々と焼き上がる様を眺めつつ熱々の一切れをほおばると、初めて口にしているのにどこか食べなじんだ「いつもの味」を感じます。
「お好み焼 きじ 本店」の創業は古く、昭和29(1954)年まで遡ります。もとはこの新梅田食道街でスタンドバーを営んでいました。昭和44(1969)年に現在のお好み焼屋へと業態を変えて今に至ります。

新梅田食道街は、大阪梅田駅すぐの高架下にあります。昭和25(1950)年と戦後まもない頃に開業した食の密集地帯です。駅周辺の再開発が進む中でも昭和の風情を色濃く残し、細く入り組んだ路地に100もの店が軒を連ねています。
さまざまなものを食べさせ飲ませる店が狭い通路に並んでいることから、ひとつ屋根の下を示す「堂」ではなく「道」を採った「食道街」の名が付けられました。
「お好み焼 きじ 本店」は、阪急大阪梅田駅から阪急うめだ百貨店側に出て、高架下に大きく書かれた「新梅田食道街」の看板のある入り口から入ってすぐのところにあります。

駅周辺ではスタイリッシュな再開発が進む中、この一角は昭和の雰囲気が色濃く残ります。高架下独特のガタゴトと鳴る電車の通過音や雑踏の喧騒も相まって、レトロモダンな細い通路を通るのも味わいのうちです。

あざやかな黄色の看板が目印の「お好み焼き きじ 本店」。暖簾の横にはカウンター席・テーブル席の数が張り出されています。暖簾の両脇は別の店舗で、入店はこの入口から階段を上がって2階に進みます。

階段の両脇にはポスターやチラシ、メニューなど、さまざまな貼り紙がところ狭しと並びます。手書きの書き込みもそこかしこにあり、お客さんたちとのやりとりでいろいろ増やしたり変えていったりしたのかな? と思わせる足跡が読み取れます。
メニューを「目に言う」と表現するダジャレも、店主の茶目っ気を感じました。
店内に入ると、長く伸びるカウンターが目に飛び込んできます。カウンターの向かいには幅いっぱいに広がる長い鉄板。店主やスタッフたちが次々とお好み焼や焼きそばなどの具材を焼いています。
客と店が差し向いになり、ジュージューと焼き上がる音とソースの焦げる香ばしいにおい、また店主やスタッフたちのやりとりを楽しみつつ、思い思いのスタイルで時間を過ごすのが「お好み焼 きじ 本店」の味わい方です。

大阪の中心地で粉もん文化を守る名物店ともなれば、生地や焼き方に相当な創意工夫があるものと思って話をきくと、意外にもずっとシンプルなものでした。
独自の個性を出そうと、生地の構成や食材をいろいろ試した時期もあったそうですが、長く食べてきたお好み焼の味と違ってきてしまい、おいしく感じられない。奇をてらって勝手にいじるのはかえって失礼なこと、「いつもの味だね」がいちばんの褒め言葉と店主は話します。
自然体を大切にする「お好み焼 きじ 本店」では、いつでもふらりと寄って食べていってほしいとの気持ちから、時間帯で変わる特別セットはありません。その代わりといってはなんですが、好みのオーダーがあるなら、店主に相談してみるのもひとつの楽しみ方です。
「お好み焼 きじ 本店」でもっとも定番といえるのが「豚玉」。本場大阪のお好み焼を味わうなら、まずは豚肉のうま味がたっぷり楽しめるこの一品から始めたいところです。
生地を包み込むように豚肉が乗せられていきます。下の生地は、外側のカリッとした焼き上がりと中のほくほくがほどよくなる厚み。鉄板の熱を受け、生地が焼けてくるいい匂いがじわじわと漂い始めます。
ひっくり返すと今度は豚肉の焼けるうま味のいい匂いが。食欲がそそられてきます。
ドリンクをオーダーして先にちびちび飲みながら待つのも良し、長くつながる鉄板の向こうで次々と焼き上げていくスタッフたちの手の技を眺めるのも良し。

卵を焼いてお好み焼の上に乗せていきます。トッピングは好みのものをオーダーでき、お客さんからの要望で少しずつ具材が増えてきた結果、今の豊富なメニュー表につながっているのだそうです。

常連さんが来ると、店に入ってきて顔を見たらすぐオーダーを待たずに「いつもの」を作り始め、すっと焼き上がりを出すことも。阿吽(あうん)の呼吸を楽しめるのも、ガード下で飾らず続けてきたお店ならではです。
ソースと青のりをかけて仕上げます。マヨネーズはお好みで。焼き上がるまでの間、鉄板の上でソースが焦げるジュワッという音と香ばしいにおいが食欲をそそり、鉄板の熱気もあって気持ちがどんどん高揚していきます。

出来上がったお好み焼が、すっと席の前に滑ってきました。お好み焼は、外がしっかり、中がふんわり。どこか懐かしさを感じさせるやさしい出汁の味と、シャキシャキとしたキャベツの食感がいい塩梅(あんばい)です。お好み焼の本場大阪での安定の味。小さな頃から食べていたような気がするくらい、いちばんなじんだ安心のやさしい味です。

「お好み焼 きじ 本店」で人気ナンバーワンの名物は「モダン焼」。一般的な、お好み焼に焼きそばを入れたものではなく、焼きそばを卵で包んだとん平焼き風。ちなみに、お好み焼に焼きそばを乗せたものも別にあるので、オーダーするときには間違えないようにしてくださいね。
具材とそばを手早く焼き上げ、ソースで味付けをしたあと、卵を出汁で溶きほぐしたタネの中にパッと焼きそばを入れ込み、卵汁をからめて鉄板に戻し、くるっとまとめていきます。

お好み焼きの生地は入っていないためボリュームが抑えられ、するっと食べることができます。手際の良さもあって、あっという間に出来上がっていき、所作を眺めているだけでも楽しめます。

「モダン焼」の誕生はまかない食だそう。さあ食べようと作ったらお客さんが来て、そのまま食べられずに放ってあった焼きそばを、お腹が空いてるだろうからとスタッフに出すとき、たまたまあった卵汁をからめたのが始まりだったとか。
卵だけで包まれている「モダン焼」は、とにかく軽いのが特徴。ふんわり卵の中に太めの麺が詰まって、もちもちした食感です。卵のまろやかなうま味とソースの甘辛さのバランスが絶妙で、するするとおいしくいただけます。
エビ、イカ、豚肉が豪華に入った「ミックス焼」も根強い人気です。ざくざくと入った具材は大きくて、イカはゲソも入っており、海鮮を味わっているボリューム感があります。豚肉のうま味とも良い相性で、甘みのあるソースがよくからみます。

お好み焼はもちろん外かりかり、中ふわふわ。鉄板で焼いたものをそのままいただくので、粉もののおいしさを最大限に引き出す熱さで長く楽しめます。
ネギのトッピングを頼むと、これでもか! というくらいたっぷり乗ってきます。見た目にも楽しい一品です。
「お好み焼 きじ 本店」の名物「モダン焼」に入っている「焼きそば」は、そのままでもぜひ味わいたいところ。豚肉やイカ、キャベツがたっぷり入っていて、これだけでも十分な食べ応えがあります。紅生姜もあらかじめ刻んで入れ込んでくれていて、口の中で良い風味をつくってくれます。

そのほか、アクセントに入る大葉がいい感じで風味を出してくれる「スジ玉」や、ほくほく食感のじゃかいもを先に炒めてから作る「エビポテト」など、お好み焼の濃厚なソースによく合うメニューがたくさんあって、どれから食べようかと迷うくらいです。

新梅田食道街の一角でお好み焼を提供する「お好み焼 きじ 本店」は、店舗がコンパクトで席数が限られるため、予約はできません。名物店とあって順番待ちになりやすいのですが、ランチのコアタイムを外せば比較的早く席につくことができそうです。
店内は終日禁煙。カードや電子マネーでの支払いはできませんので、現金を用意してくださいね。

行列ができるほどの人気店を続けながらも「お好み焼 きじ 本店」のスタイルは驚くほど自然体です。「お客さんを待たせるのは正直気の毒ではあるけども」と心苦しさをにじませつつも「ついマイペースです。申し訳ない」と気負わず語る落ち着きに、70年以上愛され続ける理由を感じました。

「お好み焼 きじ 本店」のお好み焼は、どこか懐かしく、昔から慣れ親しんだ安心感があります。
「なじみのある味」が最高の褒め言葉。誰もが「いつもの味だ」と安心できる一枚をシンプルに、お好み焼は本来そうやってさっと作りお腹を満たすもので、特別なものではないのだと店主は笑います。
差し向いに座った客の顔や仕草をみながら食べやすいものを作る。子どもも大歓迎、食べ盛りの学生が来たらちょっと大きめにしたりおまけを付けたり、まかないで出したものを客も楽しむなど、昔から地元に根付いてきたお好み焼屋、それが「お好み焼 きじ 本店」なのです。
現在の店主は3代目。「この店があって、祖母から親へと続いて、この食道街があるから成り立っているのだ」と、共に働く仲間たちへの強い連帯感をにじませていたのが印象的でした。
仲間と一緒にいる安心感と、新梅田食道街への深い想い。これが、行列の絶えない名店が自然体を貫ける理由であり、人間味あふれる温かいサービスの源泉となっているのです。
一人でじっくり味わうのも、仲間と熱々をほおばりながら楽しく過ごすのも、「お好み焼 きじ 本店」がしっかりと応えてくれます。ぜひ一度、本場大阪のローカル風情を味わってみてください。
| スポット名 | お好み焼 きじ 本店 |
| 時間 | 月~土曜 11:00~21:30(L.O. 21:30) |
| 定休日 | 日曜日 |
| 問い合わせ | 06-6361-5804 |
| アクセス | 阪急大阪梅田駅すぐ |
| 住所 | 大阪府大阪市北区角田町9-20 新梅田食道街 2F【MAP】 |
| URL | https://tabelog.com/osaka/A2701/A270101/27000297/ |
TOKK編集部
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