長岡京・大山崎・向日 TOKK
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長岡京・大山崎・向日 TOKK
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25.12.26
Mariko Takashima
京都を拠点に企画・編集・執筆を行う。

西日本で1番、全国で3番目に小さい市「向日市(むこうし)」。東西約2km、南北約4kmという面積ながらJR、阪急、そして新幹線が市内を縦断し、4つの駅が密集するなどアクセスは抜群。実は奈良時代の幻の都「長岡京」の中心地だったり、全国激辛ブームの火付け役だったり……。掘るほどに奥深い京都府・向日市について、向日市観光協会のお二人に話を伺いました。意外と知られていない、向日市の魅力を深掘りします。
取材させていただいたのは、向日市観光協会の会長・稲本さんと、事務局員の安田さんです。

普段からイベント運営など、向日市の観光に携わっているお二人。とくに稲本さんは、3歳の時に向日市(当時は乙訓郡向日町)に引っ越して以来、約70年間この地の変化を見てきた向日市の生き証人です。
和やかな雰囲気の中、地域の魅力を根掘り葉掘り、お聞きしましょう。
幼い頃を振り返り、向日市の景色はまったく別物になったと稲本さんは語ります。

「昔、この辺りは竹藪(たけやぶ)ばかりが広がっていて、阪急電車が竹をサラサラと揺らしながら走っていた記憶がありますよ。道路は舗装されておらず、牛のふんを避けながら歩いたものです。住宅開発が始まったのは50年前くらいでしょうか。今は京都と大阪のベッドタウンとして多くの人が集まる地になりました」

向日市を訪れて、まず驚くのが線路の多さです。面積わずか7.72平方キロメートルの市域に阪急、JR、新幹線が並行して走り、市内にはなんと4つ※の駅が密集しているのだそう。
ベッドタウンとして多くの人が集まっているのも納得します。
※阪急「東向日駅」「西向日駅」「洛西口駅(駅の北側は京都市西京区)」、JR「向日町駅」の計4つ。京都市南区にあるJR「桂川駅」へも徒歩数分の距離。


アクセス抜群の向日市の人口密度は全国でも上位にランクインするそう。その理由について、安田さんが教えてくれました。
「向日市には山がないので、居住できる範囲が広く、昭和40年代から急激な都市化により住宅開発が進み、駅周辺を中心に市街化されました。一方で、郊外には丘陵地の竹林やのどかな田園風景が広がっています。だから向日市は、人口のわりに過密さは感じず、穏やかな空気が流れているんだと思います」

お二人に、向日市の「いいところ」をお聞きしたところ、稲本さんの口から真っ先に出たのは「竹林」というキーワードでした。
国内でも最高級といわれる「たけのこ」の産地として有名な向日市ですが、平成12年度から、西山丘陵の竹林を整備。現在では、8種類の竹垣が連なる全長約1.8kmの散策道「竹の径」が観光名所となっています。

美しい景観は「全国遊歩百選」「歩きたくなるみち500選」「京都府景観資産」「京都府文化的景観」などに選定されました。
毎年秋に行われる「竹の径・かぐやの夕べ」では竹行灯が並ぶ幻想的な空間が広がります。

京都の竹林といえば嵐山が有名ですが、向日市の竹の径も負けていません。意外と知られていない、京都の隠れた美景スポットではないでしょうか?
| スポット名 | 竹の径(みち) |
| 問い合わせ | 070-1765-5398(向日市観光協会) |
| アクセス | 阪急洛西口駅下車 約15分、阪急東向日駅下車 約25分 |
| 住所 | 京都府向日市 |
| URL | https://www.muko-kankou.jp/recommend/detail.html?id=585 |
また、向日市では全国各地から竹馬名人が集まり、竹馬の技量を競い合う「たけうま大会」など、竹馬を使った町おこしも話題になりました。
コロナの蔓延を機に、大会は中止となってしまいましたが、当時は竹馬30m走、竹馬サスケ(障害物競走)など、白熱した戦いが繰り広げられました。今でも竹馬教室の開催や、竹馬キットの販売など、向日市商工会青年部を中心にして活動は続いているそうです。
延暦3(784)年、桓武天皇によって奈良の平城京から遷都された長岡京。仏教勢力の政治介入を避けること、そして水陸交通の便が良い地で新しい政治体制を築くことを目的に、大規模な都市計画が立てられました。
しかし、主要人物の暗殺や度重なる天災など、数々の不幸が続き、わずか10年で長岡京は廃都に……。延暦13(794)年には平安京へ再び遷都されたため、長岡京は「幻の都」とも呼ばれています。
その長岡京が置かれた地こそが、この向日市だったのです。


向日市は桂川・宇治川・木津川の合流地点に近く、水運の要所でありながら、陸運の面でも非常に重要な土地でした。それは、西国街道(※1)や物集女(もずめ)街道(※2)が向日市を通っていることからもわかります。
(※1)西国街道…江戸時代の主要な街道の一つ。京都から下関、あるいは九州の太宰府をつなぐ。一部は、律令時代に整備された「山陽道」に起源を持つ。
(※2)物集女(もずめ)街道…古くから利用されてきた道であり、江戸時代に「西国街道」と「山陰街道」を結ぶ街道として定着した。愛宕山(あたごさん)へ向かう「愛宕街道」にもつながっているため、火伏せの神様・愛宕神社にお参りに行く人が多く通った。
市内を歩くと、今もかつての街道の名残が見つかります。向日市は、古くから多くの人が集う場所だったのですね。

向日市が一躍全国で有名になったエピソードとして、平成21(2009)年「激辛商店街」の発足も欠かせません。

向日市商工会青年部で一緒に活動していたメンバーが「何かないか。愛する向日市のために、町おこしになるようなことができないか(激辛商店街のサイト原文ママ)」と考え抜き「ないものはない」という結論から導き出されたのが、辛いけど旨い「激辛グルメ」でした。
それまで罰ゲーム的に使われていた辛いものをグルメに昇華したこの企画は大ヒット。数々のメディアに取り上げられ、コンビニエンスストアや企業とのコラボ企画が生まれるなど、「激辛」は全国で一躍ブームとなりました。
今回、第1回KARA-1グランプリでゴールドグランプリを受賞した、麒麟園の激辛坦々麺を試食してきました。

1辛〜5辛のうちオーソドックスな「2辛」を注文。
2辛~5辛はブート・ジョロキア、6辛~10辛はモルガ・スコーピオン、11辛~15辛はキャロライナ・リーパーと、さまざまな唐辛子を辛さのレベルに応じて使っているそう。

さすが初代のグランプリ! 一口目から、ピリリとした辛さの奥に濃厚な旨さが広がります。
しかし最後はあまりの辛さに、目から涙が……。店長いわく3辛〜5辛はマニア向け。それ以上の辛さも、現在開発中だそうです。
| スポット名 | 麒麟園 |
| 営業時間 | ランチ11:00~14:00(最終入店13:25、L.O.13:30)、ディナー16:30~23:00(最終入店22:00、L.O.22:15) |
| 定休日 | 火曜 |
| 問い合わせ | 075-933-1370 |
| アクセス | 阪急東向日駅下車 約3分 |
| 住所 | 京都府向日市寺戸町東田中瀬5-54【MAP】 |
| URL | https://kirinen.com/ |
最後に稲本さんと安田さんに、観光スポットではなく、個人的にお気に入りの景色についてお聞きしました。
稲本さんは「洛西口駅の西側に降りた時、街の向こうに広がる西山丘陵」。

都市開発が進んでも、市の西側一帯に広がる山々の姿はいつまでも変わりません。稲本さんはこの風景が大好きで「いつか西山を眺める展望台がほしい」と常々思っているそうです。
もう一つ、「向日神社への参道」も稲本さんのお気に入りの風景。向日神社の創建は、長岡京ができるよりも前の養老2(718)年と伝えられ、向日市が持つ長い長い歴史を伝えています。

| スポット名 | 向日神社 |
| 営業時間 | 9:00~16:00(社務所) |
| 定休日 | 無休 |
| 問い合わせ | 075-921-0217 |
| アクセス | 阪急西向日駅下車 約10分 |
| 住所 | 京都府向日市向日町北山65【MAP】 |
| URL | https://www.muko-kankou.jp/map/detail.html?id=387 |
そして安田さんからは「田園風景の中を颯爽と走る新幹線」。
おすすめの眺望スポットとして、向日市民体育館の裏手を教えてもらったので、行ってきました。周辺に高い建物がないため、高架を走る新幹線はのびのびと気持ちよさそう。
「引退が発表されていますが、ここでドクターイエローを見かけるとうれしいんです」と安田さん。

新幹線の沿線には、人口密度が全国上位とは思えぬのどかな風景が広がっています。
奈良時代には都になった歴史を持ち、その後も竹林の街、激辛グルメの街など、さまざまな顔を見せてきた向日市。そして今、向日市は暮らしの街として、阪急「洛西口駅」周辺や、JR「向日町駅」周辺の開発が進んでいます。
「小さいからこそ地域の結束力が高く、昔はなかなか外からきた人が打ち解けにくい側面もありましたが、2000年以降くらいから、風向きが変わりました。若い世代が地域づくりの中心となり、面白い仕掛けがどんどん生まれています。今後もますます、住みやすい街になっていくことを期待しています」と稲本さんは語ります。

稲本さん、安田さん、ありがとうございました。
ギュギュッと魅力が詰まった向日市は、コンパクトだからこそ、隅々まで歩いてまわれるおもしろさがあります。ぜひ、その奥深さを体験しに来てくださいね。
ライター
Mariko Takashima
幼い頃から関心の強かった環境問題に携わるため、2025年~循環型の社会づくりに取り組む企業のPRに所属。フリーランスとして編集活動を続ける。つくるものは、雑誌・書籍・Web・SNSなど媒体問わず。かつてTOKK(本誌)の制作に携わっていたことも。
2026.1.4 - 2026.1.10