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小磯良平、幻の名作《日本髪の娘》が約90年ぶりに日本に里帰り

26.02.21

クボタエリ

クボタエリ

奈良県出身、大阪在住。アートと音楽、猫、工芸、カレーが好き。毎年の正倉院展が楽しみ。

小磯良平、幻の名作《日本髪の娘》が約90年ぶりに日本に里帰り
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六甲ライナー「アイランド北口駅」を西側に出てすぐにある「神戸市立小磯記念美術館」で、『特別展「小磯良平展ー幻の名作《日本髪の娘》」』が、3月22日(日)まで開催中です。

神戸市立小磯記念美術館 外観

小磯記念美術館は、昭和期に活躍した神戸出身の日本近代西洋画家・小磯良平(1903年ー1988年)の約2000点の作品資料が所蔵された美術館で、1992年11月に開館しました。

神戸市立小磯記念美術館 外観

本展覧会の目玉作品である《日本髪の娘》は、なんと約90年ぶりに日本に帰還しました。戦前、神戸の山本通にあったアトリエで描かれ、1935年の『第一回第二部会展』に出品された後、海を渡り「李王家美術館(現・国立現代美術館)」に購入されましたが、第二次世界大戦の混乱で行方知れずに。2008年に韓国国立中央博物館で開催された展覧会に《日本髪の娘》が出展されたことをきっかけに、作品の所在が明らかになりました。それから18年が経ち、今回ようやく念願の里帰りを果たしたというストーリーがあります。

つまり本展覧会は、小磯良平の画家人生においても、小磯記念美術館の歴史上においても、かなりのインパクトを残すもので、学芸員の方は「小磯の画業を初期からさかのぼることのできる、またとない機会になった」と話してくれました。

今回はそんな特別な展覧会の模様をレポートします。

左:小磯良平《青衣の女》 1929年 右:小磯良平《横たわる裸婦》1931年 いずれも神戸市立小磯記念美術館

約100点が出品される本展覧会は、3つの章立てで構成されます。第1章「小磯良平の画業」では、小磯の画家としての人生を振り返ります。小磯は生涯にわたり女性像を描いた画家として知られていますが、本章では、10代の頃に描いた静物画や、東京美術学校(現在の東京芸術大学美術学部)西洋画科在学時に描いた作品などを時系列で紹介しています。

左:小磯良平《リュートのある静物》1966年、右:小磯良平《室内のバレリーナ》1967年 いずれも神戸市立小磯記念美術館

2年間のフランス留学で受けたフォービズム(野獣派。20世紀初頭にフランスで起こった絵画運動)やエドガー・ドガのバレリーナからの影響が如実に作品に表れている様など、戦争に翻弄されつつも、晩年まで芸術表現を模索し続け、時代とともに具体と抽象を行き来して変遷する彼の画風を、ありありと感じ取ることができます。

左、右いずれも:小磯良平《婦人蔵》1956年 神戸市立小磯記念美術館

この章での見どころのひとつは、宝塚歌劇出身で人気女優の八千草薫を描いた肖像画。また、東京・迎賓館赤坂離宮の「朝日の間」に常設中の2枚の大作《絵画》と《音楽》の準備作のデッサンも必見です。

左:小磯良平《着物婦人》1957年 神戸市立小磯記念美術館、左:小磯良平《着物婦人像》1966年 個人蔵

小磯は、とりわけモデルのコスチュームについてのこだわりが強かったようです。第2章「小磯良平の和装婦人像」では、着物姿の婦人像にフォーカスした作品が展示されています。神戸中山手通りのハイカラな街に生まれ、西洋的でモダンな「神戸イズム」がルーツにある小磯の作品の中で、和装を描いたものはわずか5%ほど。モデルの表情やポーズ、着物の柄、身体の向き、小物、筆致などからは、小磯のセンスと美意識が光ります。

左:小磯良平《大原女》制作年不詳、右:小磯良平《膝をつく大原女》1957年 神戸市立小磯記念美術館

1958年〜60年に京都に通い舞妓を描き、1961年〜62年に朝日新聞で連載されていた川端康成の小説『古都』の挿絵も手がけた小磯は、和装の労働者「大原女」や「白川女」にも興味を持ち、実際の衣装をモデルに着せて絵を描いたそうです。

小磯良平のアトリエ

第2展示室から第3展示室に向かう道中には、住吉山手から移築・復元した小磯のアトリエがあります。小磯愛用の画材や室内に置かれたモチーフに彼の息遣いを感じることができます。ぜひこちらも忘れずに足を運びましょう!

左:小磯良平《着物の女》1936年 神戸市立小磯記念美術館、右:小磯良平《和服の婦人像》1935年 姫路市立美術館

そして第3章「《日本髪の娘》と第二部会」。いよいよ《日本髪の娘》が登場します。

左:小磯良平《日本髪の娘》1935年 韓国国立中央博物館、右:小磯良平《踊り子》1935年 武田薬品工業株式会社

1935年頃、帝展が美術の国家統制を強化しようとした「帝展改組」に、自由な創作ができないとして反発した小磯含む洋画家たちが、『第二部会展』に参加します。その際に小磯が出品したのが《日本髪の娘》(写真左)と、その隣に展示された《踊り子》(写真右)です。

当時大阪・髙島屋のカタログに掲載され、小磯が購入した「流線美式天象」の着物を着て、桃割れのかつらをつけ、椅子に腰掛ける女性。凛とした眼差しが印象的です。

千總《流線美式天象》(復刻)2014年 髙島屋史料館蔵

《日本髪の娘》のモデルをつとめたのは、上田種子(1912年ー2000年)という女性。小磯の元に絵を習いに来ていた神戸の令嬢で、自身も画家として熱心に制作に取り組みました。彼女は先進的な神戸のモダニズムを体現している女性として、小磯の絵に度々登場します。《踊り子》のモデルに関しては憶測の域を出ないそうですが、学芸員たちの間では上田種子ではないかという見方もあるとのこと。

約90年の時を経て、再び同じ空間に展示された2枚の絵からは、何を感じるでしょうか。出展当時からそのままの、お揃いの豪華な額装もポイントです。

ミュージアムショップ
本展覧会の図録
ミュージアムショップ

ミュージアムショップでは、図録をはじめ、ポストカードなど多くのグッズが販売されています。

まだ小磯記念美術館に訪れたことがないという方も、小磯良平が好きだという方も、この貴重な機会にぜひ足を運んでみてくださいね。小磯良平について知ることはもちろん、長い時と距離を超えて再び故郷の地を踏んだ《日本髪の娘》から、ロマンを感じることができるのではないでしょうか。

本展覧会の看板
展覧会名特別展「小磯良平展ー幻の名作《日本髪の娘》」
会場神戸市立小磯記念美術館
会期2026年3月22日(日)まで
営業時間10:00〜17:00(入館受付は16:30まで)
休館日月曜(2月23日〈月〉は開館、2月24日〈火〉は休館)
入館料一般:1,200円(1,000円)
大学生:600円(500円)
※()内は前売及び、20名以上の団体料金
高校生以下:無料 
※学生証、生徒手帳などを提示
神戸市在住の65歳以上:600円 
※住所と年齢が証明できるものを提示
障がい者手帳またはスマートフォンアプリ「ミライロID」等を提示の人:無料
お問い合わせ078-857-5880
アクセス六甲ライナーアイランド北口駅下車すぐ
住所神戸市東灘区向洋町中5-7(六甲アイランド公園内)【MAP
URLhttps://www.city.kobe.lg.jp/kanko/bunka/bunkashisetsu/koisogallery/index.html

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クボタエリ

岡本_御影ライター

クボタエリ

グラフィックデザイナーからライターに転向して9年。音楽やアートなどのエンタメ中心にインタビュー記事やレポート記事を多く手がける。現場の雰囲気や、人の想い、ストーリーを掬いとった記事を書くのが得意。

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