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26.03.04
Mariko Takashima
京都を拠点に企画・編集・執筆を行う。

平成26(2014)年に誕生した、嵐山商店街の公式キャラクター「月橋渡(つきはしわたる)」。リリース直後、嵐山の観光名所「渡月橋」を背中に背負った不気味な(?)シルエットがネットを中心に話題になりました。賛否両論が巻き起こる中、「キモカワ」としての地位を確立したものの、その正体は謎だらけ……。今回は、そんな月橋渡、通称・わたるくんに会いに行ってきました。
平安時代から貴族の別荘地として愛されてきた嵐山。竹林の小径(こみち)、世界遺産の天龍寺など見どころが多く、国内外から多くの観光客が訪れる、京都屈指の観光エリアです。

わたるくんは、そんな嵐山エリアのメインストリート「嵐山商店街」の公式キャラクターとして平成26(2014)年に誕生しました。

わたるくんのモチーフは、嵐山のシンボル的存在、桂川に架かる「渡月橋」です。

橋を背負う白い生物は、一体何者なのか? なぜ「すいません」が口癖なのか?
インターネットで検索しても、公式プロフィール以上の情報はなかなか出てきません。

謎が多いわたるくんに少しでも近づくために、嵐山商店街にアポイントを取り、取材させてもらうこととなりました。
嵐山商店街に連絡したところ、令和8(2026)年2月3日の節分に、わたるくんが天龍寺で豆をまくという情報をゲット。約束の日時に、天龍寺へ向かいます。

のぼりがはためき、青竹が焚き上げられるなど、境内はお祭りムード。豆まき用の特設ステージがある「法堂」前へ向かいます。

ステージに登場したのは、天龍寺の管長(最高位の僧侶)、嵯峨商店街会長、嵐山商店街会長、京都市会議員の方、そして今年の年女・年男の皆さん……。

重鎮たちの登場に続き、ついに、わたるくんが登場!! 観客からは歓声が上がります。会場の熱気から、彼の人気ぶりをひしひしと感じ、ますます、何者なのかが気になります。
そして、豆まきがスタート。
まん丸い手で、どうやって豆をまくのか不思議でしたが……。
しっかりと供物台を持ち、上に乗せてもらった豆を、えいッとぶん投げています。

わたるくんが豆をまくたびに歓声が!


大熱狂の豆まきが無事に終了。最後にファンサービスをしっかりしてから、わたるくんはステージ裏へゆっくり退場していきました。

わたるくんが、法堂の裏口から出てきてくれました! とてもゆっくりした動きです。

介助してもらいながら、よちよち歩きでスロープを降りてくるわたるくん。

聞くと、視界がかなり悪いらしく、足元はおろか、小さな子どもだと全く見えてないこともあるのだそう。わたるくんの視界に入りたい方は、少し離れた位置から手を振るのがおすすめです。

わたるくんの姿を拝もうと、続々と人が集まってきます。「はい、わたるー」の掛け声にあわせた写真撮影タイムが続きます。

ファンの方が持っていたミニマスコットと、夢のコラボを実現する一幕も。ギュッと握っている手がかわいい。

せっかくなので、ゲットした豆も持ってもらいました。

ここからしばらく、ポージングを試行錯誤するわたるくんをお楽しみください。
可動域が狭いので、変化は小さめ。それがまたかわいいです。



いつもより深めの「すいませんポーズ」もいただきました。

まだまだ謎の多いわたるくんについて探るべく、嵐山商店街の会長・石川恵介さんに話を聞きました。
写真右端が石川さん。実は、石川さんこそがわたるくんの総合プロデューサーであり、Xの中の人としても活動しています。

「わたるくんは、嵯峨美術大学の学生によるコンペから生まれました」と石川さん。商店街の役員で話し合い、約30案から初めに選ばれたのは動物をモチーフとした、いわば「よくありそうな」かわいらしいキャラクラーだったそうです。
「その時、若い人がターゲットのゆるキャラをこのまま年配の役員だけで決めていいのか?と疑問がわきました。そこで商店街の会員のうち、若い店員さんやご子息に協力してもらい、メインのターゲット層である20~30代の意見も集めることにしたんです。そこで選ばれたのは、ダントツでわたるくんでした。私は確信を持って、わたるくん案で進めることに決めました」


ところが、わたるくんがリリースされた途端、「気持ち悪い!」「怖い!」とネットは大炎上。石川さんのもとには謝罪を求める声が集まりました。
「こんなもの世に出すな、と直筆の手紙が届いたことも。各所に謝り続けて、夜も眠れなくなるくらい不安な日々が続きました。でも、じわじわとわたるくんが人気を集めはじめ……。今では天龍寺の公式行事に呼ばれるほどになりました。今日もすごい歓声でしたよね」
なんと、わたるくんの口癖「すいません」は、石川さん自身が謝り続けたエピソードから生まれていたんです。彼の謙虚な姿勢には、なんとも深い理由がありました。

ちなみに石川さんは、大手電気機器メーカで広告・ブランディングに携わった経験の持ち主。わたるくんのヒットの裏には、実力派のプロデューサーが隠れていたのですね。
以下、わたるくんのリアルな事情を紹介します。覚悟のある方だけ、読み進めてください。
・着ぐるみ(本体)に入るには、身長170cm・細身がベスト。それより身長が高くても低くても、うまく着用できない(石川さんは入れない)。
・着ぐるみは初代と改良版の2体あり。初代は通気性が悪く、夏場の活動が過酷すぎたので、危険を感じて改良版が制作された。
・初代と改良版、それぞれが違うイベントに出演して、帰り道にばったり遭遇するハプニングが起きたこともある。
・試行錯誤の末、人の存在を感じさせない丸いフォルムの着ぐるみが完成した。肘や膝など、関節部分が一切出ないのがポイント。ただし、かなり動きにくい。
・橋を背負う白い生物の正体については、石川さんも「なんなんでしょうね?」とのこと。
・念のため聞くと、真ん中の黒い丸は、口。視界は相当悪く、足元は見えない。

普段、わたるくんは嵐山交番前のショーウインドー(?)に、収納されています。

石川さんはこの場所に、謝りたいことを絵馬に書いて奉納できる「お詫び処」の設置を企画しているそうです。
みんな多かれ少なかれ、心の中に「すいません」と言いたいことってあるものです。そんな気持ちを、わたるくんの前で懺悔できたら……。実現されるのが楽しみです。
幼稚園や消防署、全国ゆるキャラショーなど、時折イベントに出張しているわたるくん。実物に会いたい方は、ぜひXで最新情報をチェックしてくださいね。


ライター
Mariko Takashima
幼い頃から関心の強かった環境問題に携わるため、2025年~循環型の社会づくりに取り組む企業のPRに所属。フリーランスとして編集活動を続ける。つくるものは、雑誌・書籍・Web・SNSなど媒体問わず。かつてTOKK(本誌)の制作に携わっていたことも。
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