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五月山で松茸が獲れた!? 90年の記憶からたどる池田の物語とは?

26.03.19

野村

野村

大阪を拠点に関西のあちこちに出没する取材ライター。おもに京阪神エリアで取材しています。

五月山で松茸が獲れた!? 90年の記憶からたどる池田の物語とは?
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池田で生まれ育って90年。前田勘治さんに聞く。

大阪府北摂エリアの北西部に位置する池田市。大阪・梅田から電車で約20分という抜群の利便性を誇る立地ながら、五月山(さつきやま)や猪名川(いながわ)といった自然にも恵まれた街です。現在では「カップヌードルミュージアム大阪池田」や「五月山公園」など、観光や憩いのスポットもあり、市内外の多くの人から親しまれています。

そんな池田市は数十年で大きな変化を遂げているのをご存知ですか。池田市で90年以上の時間を過ごしてきた一人の男性に話を聞きました。

前田勘治さん プロフ

大阪府池田市生まれ・池田市育ちの90歳。そして現在も池田で暮らしている。関西大学法学部を卒業後、豊中市役所に入庁し、平成8(1996)年に定年退職。画家、エッセイストとしても活動しており、『路地歩き、くさぐさの記』『ちょっといい話 人の心根にふれて』といった著書には、子ども時代に過ごした池田の様子を文章と絵で丁寧に描いている。

田畑と畦道が広がる田舎町だった池田

前田さんが暮らすのは、阪急池田駅から東へ少し歩いたところ。駅から近く、お店や住宅がたくさんあり、池田市のなかでも賑わう場所です。

「僕が子どもの頃の池田は、田んぼばっかりの田舎やったねぇ」。
90年という歳月の中で、まちの風景や人々の暮らしがどう変わってきたのかを、自身の記憶と言葉で語る前田さん。昔の池田の景色で真っ先に思い出すのは、やはり家の周りに広がっていた田畑の風景なのだとか。

「このあたりの路地は、もともと田んぼのあぜ道やったもの。農地だった名残なんや。この辺りにも昔はたくさん農家さんがいたんやで。今はもうあんまり残ってないけどね」。
前田さんのエッセイ『ちょっといい話 人の心根にふれて』にも、当時の様子がこう記されています。

「私が小学校四年生の頃は、自宅周辺は田んぼや畑で、畦道には雑草が生えていた」「少年の頃、家の周囲の細い道は舗装されていない土のままであった」

前田勘治さん著書

前田さんは、そんな畦道で植物採集をして遊んでいたと言います。
また、エッセイ『路地歩き、くさぐさの記』には、大阪らしさを感じる長屋があったことが描かれています。

「長屋の家はほとんどが建ち替わり、昔の面影はもう今はない。長屋の北側の農道沿いに通っていた阪急電車も現在は高架になり路地から高架を走る電車が見える。少年の頃は、その農道と長屋の間に空き地がありそこでよく三角ベースの野球をした」とあり、かつての池田の姿を想像させてくれます。

現在の池田には田畑の景色や長屋などはほとんどなくなってしまいましたが、その名残は今も街の中や人に息づいているのですね。

温泉での洗濯、五月山で採れた松茸!? 自然が身近すぎた昔の池田

取材当日、前田さんは古いアルバムを用意してくれていました。そこには、家の前の道路がまだ舗装されていない頃の写真や、五月山が高い建物などで遮られずにしっかりと見えた時代の風景が収められていました。

前田勘治さん メイン

また、アルバムの中には前田さんご夫婦が「商工会議所」で行った結婚式の写真も。かつては商工会議所が、冠婚葬祭の場として地域に開かれていたことが分かります。

前田勘治さん 結婚式

「実は商工会議所の近くには、昔は温泉があったんです。今はもう暗渠(あんきょ)になって埋められてしまったけど」と前田さん。その温泉のそばには洗濯場があり、冬になると温泉の湯気がたちのぼっていたのだそう。そこには近隣の主婦たちが集まって温かい温泉の湯でぬくぬくと洗濯をしていたと言います。

「温泉やから冬でもあったかくてね。みんなそこで洗濯しながら話をしてたんや」と、当時の池田の日常を教えてくれました。

また、家族で五月山へピクニックに出かけた写真を指しながら、「五月山では、松茸が採れたんやで」と、にっこり笑う前田さん。かつての池田は想像以上に自然豊かで、自然が身近だったことに、とても驚きました。

人と物が行き交う交通の要衝「池田駅」の変遷

池田市を語るうえで欠かせない存在が「阪急池田駅」。池田駅を含む阪急宝塚線が開通したのは、明治43(1910)年のことでした。
前田さんのエッセイ『路地歩き、くさぐさの記』には、線路敷設に関する話しも記されています。

「このあたりは高台であるため線路を敷設するにあたり電車道の勾配を緩和する必要が生じた。そこで付近の丘から土を採って電車道に盛り土をしてなだらかにする工事が行われた。土を削り採った崖のところを崩れないようにするため野面積みといわれる石積が施工された。これは父から聞いた話だ。現在その石垣がそのまま残っており当時の開発ぶりを偲ばせている」

前田勘治さん インタビュー

エッセイに記されている通り、実際に現地を訪れると今もその石垣が残っています。100年以上前の鉄道開発の痕跡が、現在の街の中に静かに息づいていることにロマンを感じます。

「今は高架の上を走ってるけど、昔は 地上を走ってた。スピードも今よりずっとゆっくりやったなぁ。電車の前にはカゴがあって、何かあった時に人をすくえるようになってたんや」と前田さん。救助網は、日本の初期の電車では一般的な装備だったようです。

さらに、踏切には人が立ち、手動で遮断機を上げ下げしていたと言います。90年で鉄道も大きく進化したのだと、実感できるエピソードです。

前田さんが愛する今の池田、猪名川の景色

90年にわたり池田の変化を見続けてきた前田さんに、今一番好きな池田の場所を尋ねると、迷わず「猪名川が好きやね」と答えてくれました。

「私は絵を描いたり、文章を書いたりするんやけど、猪名川を眺めながらボーッと推敲する時間が好きなんです。鷺が魚をとるために川岸に堂々と立っている様子を眺めているのが好きですね」と前田さん。実際にアトリエ入り口には、大好きな猪名川に架かるハープ橋の絵が飾られていました。普段から景色を描くことが多い前田さんらしさを感じる答えに、筆者も思わず猪名川を見に出かけたくなりました。

前田勘治さん作品「猪名川に架かるハープ橋」
「猪名川に架かるハープ橋」

また、下記は池田城の城主・池田氏の菩提寺「大広寺」前を描いたもの。猪名川や五月山、路地の残る池田市。前田さんが愛し続けてきた池田の風景は、今も街のあちこちに残っています。

前田勘治さん作品 「大広寺」前

前田さんに教えていただいた90年分の記憶をたどりながら、池田を歩いてみるのも、この街の楽しみ方のひとつかもしれません。ぜひ散歩に出かけてみてください。

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