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誰もがきっと1つは持っている“なつかしの場所”。
沿線で愛される、1972年創業のお店の素敵なストーリーをご紹介。

阪急沿線に住んでいて、パンが好きな方でこの名前を知らない人はいないのではないだろうか。フィリップ・ビゴ、言わずと知れたフランスパンを日本に広めたフランスパンの神である。「ビゴの店」も今年で50周年を迎えた。

そんな同店の開店前はとかくにぎやかだ。にぎやか…といっても人が多いからではない。実は、パンは焼きあがるととてもおしゃべりになる。オーブンから出して5分、かなりの音量でパンはパチパチとささやき始める。「この音すごいでしょ?私たちの言葉ではミュウミュウアンジュ=天使のささやきと言うんです」と教えてくれたのは勤続11年になる職人の山本さん。

ささやきはパンの中にある蒸気が外に出る音で、このささやきでパンにヒビが入る大切なものなのだとか。話を聞きながら、鼻孔をくすぐるパンが焼ける良い香りに思わず頬も緩んでしまう。この幸せは開店早々お店を訪れた人だけが味わえる至福のひと時だ。
フランスパンの神フィリップ・ビゴさんは2018年に他界され、今は長男の太郎さんがお店を守っている。

「カリスマ的な存在だった父は、本当に厳しい職人でした。褒めることも滅多にないし、子どもである私にも本当に厳しかった」と太郎さん。「それでもそんな父に認められるべく、わたしも必死でした」。

太郎さんが25歳の頃、新神戸の店舗をスタッフゼロの状態で急遽「明日からあの店回してこい」と投げ出されたことがあったそう。「自分で新たに料理人を見つけて、その人と二人で店を回した時は、本当に大変でした」。結果2週間で店を立て直した太郎さんをビゴさんは初めて褒めたのだそう。「自分の自信になった、ターニングポイントです。でもしんどかったけど楽しかったんだよなぁ」と振り返り、語る顔は誇らしい笑顔だ。
パン業界は人が減っていると太郎さん。またビゴさんが亡くなってから、様々な悲しいことがあったのだとか。「本当にいろいろありました。でもだからこそ従業員の大切さは感じているし、この店に来てくださるお客様がいる限り、私がビゴのパンや店をしっかり守らなくてはと改めて思っています」。

発酵が何より大切で、パン作りは子育てと同じと考えたビゴさん。ほかにも“なるべく安く提供”“お客さんの立場で納得できないことはしない”などエスプリはそこかしこに今も息づいている。

「芦屋の人はみんな目利きがすごい。だから下手なことはできないよね」とお茶目に笑うが、それはパンの激戦区である芦屋で平日朝から客足が全く絶えないことでもわかる。「味も価格も守りながら、今後も常に新しいものを提供したい」という太郎さんの挑戦が楽しみだ。


ボーダーにキャスケットというパリを感じる制服の「ビゴの店」。太郎さんの制服の胸にはフランス語で刺繍が。50ans…というとお店の50周年のために作られた?「実はこれ父が日本に来て50年を記念して作ったものなんです。でも今年ビゴの店も50周年なんで、いいかなって」と朗らかに笑う。話し上手な太郎さんは、常に周囲に笑いが絶えず取材中も「ここだけの話・・」と取材陣を大いに盛り上げてくれた。すべてここに書けないことが残念!
| スポット名 | ビゴの店芦屋本店 |
| 時間 | 9:00~20:00 |
| 定休日 | 月曜休(祝日の場合は翌日休) |
| 問い合わせ | 0797-22-5137 |
| アクセス | 阪急芦屋川駅下車 約9分 |
| 場所 | 芦屋市業平町6-16【MAP】 |
| URL | https://www.bigot.co.jp/myshop/ashiya/ |
連載「阪急沿線で、半世紀。」のバックナンバーはこちら
2025.11.19 - 2025.11.25