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26.04.21
S子
京都生まれ・京都育ち・大阪在住。関西の街ネタ系出版社や仕事情報系出版社に勤務し、関西の街・文化・人・食にまつわる企画の編集・取材・執筆に多く携わった後に独立。

午前から昼にかけての阪急宝塚駅周辺は、どこか晴れやかな空気に包まれます。宝塚大劇場へ向かう人、ブティックで買い物を楽しむ人、手塚治虫記念館へ足を運ぶ人――。そんな駅周辺のにぎわいから、ほんの少しだけ足を伸ばした先にある、蔦の絡まるレトロな建物。それが「宝塚文化創造館」です。
ここは、かつて宝塚音楽学校の校舎として、少女たちが歌い、踊り、夢を育てた場所。今もその記憶を宿しながら、新たな文化の拠点として親しまれています。
上写真は(C)宝塚歌劇
「宝塚駅から花のみちを通って来ていただくほうが、より宝塚らしさを感じてもらえると思います」。そう言って迎えてくれたのは館長の三戸裕徳さん。宝塚で生まれ育ち、宝塚創造館では15年にわたり、イベントやワークショップを手掛けてきました。
「花のみち」の沿道には、ホテルや商業施設、宝塚大劇場など、中世ヨーロッパ調の建築物が連なり、見上げれば、タワーマンションの屋根までもがスパニッシュ瓦のようなオレンジ色。宝塚歌劇や音楽にまつわるオブジェも点在し、歩くだけで、文化に触れている、そんな感覚になります。

この界隈は、阪急電鉄の創立者・小林一三氏が、温泉や遊園地、劇場などを一体的に整えたことで発展してきました。娯楽と文化を結びつけ、人が訪れ、楽しみ、また足を運びたくなる場所をつくってきた歴史があります。
「宝塚は、遊びながら文化や芸術に触れられる街。当館も、そんな宝塚の文化を伝えながら、人と文化をつなぐ“繋ぎ手”のような場所でありたいと思っています」
「宝塚文化創造館」は、昭和10(1935)年に建てられました。その後、昭和12(1937)年から宝塚音楽学校の校舎として使われ、平成10(1998)年まで、戦時中の休校期間をはさみながらも長期間にわたり、幾多のスターたちを世に送り出し続けてきました。
音楽学校の移転後も、市民や卒業生から「残してほしい」という声が多く上がり、平成23(2011)年7月15日、宝塚唱歌隊が発足した日に合わせて「宝塚文化創造館」としてグランドオープン。第二の歩みを始めたのです。

館内には、この建物が過ごしてきた長い時間が、あちらこちらで息づいているのを感じます。白壁、丸窓、使い込まれた階段……。数多くの生徒たちが、この廊下を歩き、この階段を上り、稽古場で汗を流してきました。

エントランス正面の階段は二手に分かれ、向かって右側(上手)が来客と講師が使用し、左側(下手)が生徒専用として使用されました。左側の踏み面のほうがすり減っているのは、生徒たちが何度も昇り降りした跡。そうした細部の一つひとつが、この建物に積み重なった時間を物語っています。

歌劇ファンだけでなく、建築に惹かれて訪れる人も多く、近代化産業遺産にも認定されています。
1階にあるのは「講堂(文化交流ホール)」。かつて宝塚音楽学校の入学式や卒業式が行われた空間は、現在コンサートやイベント会場として使われています。
天井が高く、音の響きも豊か。観客席は通常102~150席。ステージとの距離の近さも魅力です。館主催の宝塚歌劇OGによるコンサートは毎回すぐに完売してしまうそうで、ゴールデンウィークには、フルコンサートグランドピアノ「YAMAHA-CF」を一般向けに開放する催しも開かれています。

2階は「すみれ♪ミュージアム」。音楽学校の制服や教材、卒業写真、宝塚歌劇草創期から現在に至る公演ポスター、有名公演の衣装などが並びます。


映像スペースでは、120インチの大スクリーンで宝塚や歌劇にまつわる映像を上映。「舞台スタッフの仕事」ほか「宝塚ファミリーランド」の貴重な映像も観られます。
平日はリクエスト上映も行っており、観劇の前後に立ち寄る人もいれば、時間を使って堪能するなど過ごし方は人それぞれです。

3階には、かつて生徒たちがレッスンに励んだバレエ教室と日舞教室が、ほぼそのままの姿で残され、現在は貸しスタジオとして有料で利用できます。
「特にバレエ教室の人気は高く、ほぼ埋まっています。撮影にも使われますね」と三戸さん。

音楽学校時代の空気を今に伝える空間でありながら、今もなお、人が集い、身体を動かし、表現を磨く場であり続けています。
館内外では、イベントやワークショップも年間を通して行われています。既成の企画を持ち込むのではなく、宝塚という場所、歌劇という文化、参加者や講師の個性に合わせて「イチからつくる」姿勢を貫きます。
市民が自身で創造できるように、企画から運営まで関わって学ぶ「イベントをつくろう」というワークショップもあります。

「アーティストが何をしたいか、市民が何に輝きを見出すか。劇場でしか体感できないことにしないと、もったいないと思うんです」と三戸さん。
たとえば、宝塚歌劇のOGが講師を務める「歌劇メイク体験ワークショップ」。3階でメイクを施したあと、1階の講堂ホールで撮影まで行う構成で、建物そのものを生かした企画になっています。

「80歳以上の展覧会」も人気の企画のひとつ。宝塚市展に出品した80歳以上の人に呼びかけ、作品の横にそれぞれのエピソードを添えて展示します。
「定年後に絵を学び始めて、80歳を過ぎてやっと人様に見てもらえる絵になりました」
そんな言葉に、鑑賞者もスタッフも勇気づけられるそうです。
なかでも注目されるのが、平成25(2013)年から続くイベント「宝塚ぼうさい劇場」です。きっかけは、三戸さんのこんな発想でした。
「コンサートをやってたら、火事が起きた。みんなで避難する――その訓練、面白くないですか?」
周辺の自治会が、防災訓練をしてもなかなか人が集まらないことを知り、コンサートと避難訓練を組み合わせることを提案したのが始まりです。
実際の演奏中に火災や地震が起こり、観客が避難する。消火器の使い方やAEDの体験、持ち出し品ゲーム、オリジナルの防災劇なども組み合わせ、昨年は延べ1,000人が参加するイベントに育ちました。

年ごとに内容が変わるのも特徴です。避難後、電気自動車の電力でコンサートを再開した年もあれば、地域の人たちとバケツリレーでコーヒー豆を焙煎し、それをお土産にした年もありました。
発災後、自分たちで避難所を運営することになる3日目以降の避難生活を体験する「避難所運営ゲーム 3日目からの挑戦」も実施しました。

防災まちづくり大賞消防庁長官賞や防災功労者内閣総理大臣賞を受賞するなど、評価も高く、現在は、この取り組みを全国の文化施設へ広げる活動にも取り組んでいます。
歴史のある街だからこそ、新しく転入してきた人たちと、もともと地域に暮らしてきた人たちが、どのようにコミュニケーションをとる環境をつくるかということが、課題のひとつでもありました。防災イベントをある意味お祭りのように開くことで、顔の見える関係が少しずつ生まれていく。そんな手応えを感じていると三戸さんは話します。
「私たちのミッションは、繋ぎ手になること。当館でイベントをやっていると、『今日は何?』『テント一緒に立てよか』って手伝ってくれたりするんです」

顔が見える関係が生まれることで、「街って良い方向に変化する」と実感しているという三戸さん。館前の花のみち・さくら橋公園には、もともと桜が1本もなかったそうですが、地元自治会が「桜を植えよう」と動き出し、今では生まれた子どもの名前を刻んだ記念樹として毎年増えているのだとか。
「自分の子どもに、宝塚の街っておもろいなって思ってほしいんです。大人が楽しそうにしていないと、子どもに希望がないじゃないですか」
文化を残すことも、人をつなぐことも、その先にあるのは、宝塚というまちをこれからも“楽しい街”であり続けさせること。そのための場所として、「宝塚文化創造館」は今日も来館者を迎えています。

昭和10(1935)年築の宝塚音楽学校旧校舎を活用した「宝塚文化創造館」。すみれ♪ミュージアムでは宝塚歌劇の歴史を、講堂ホールやレッスンルームでは今も生まれ続ける表現や交流を体感できます。
観劇の前後に立ち寄るのもよし、イベントやワークショップに参加するもよし。「宝塚に来たついでに」ぜひ訪ねてみてください。きっと、長居することになります。

| スポット名 | 宝塚文化創造館 |
| 営業時間 | 9:00~17:00、「すみれ♪ミュージアム」は10:00~16:30(入場は~16:00) |
| 定休日 | 月曜、年末年始 |
| 料金 | 入館無料、「すみれ♪ミュージアム」は一般300円、中高生200円、小学生100円、レッスンルーム利用料はホームページ参照 |
| 問い合わせ | 0797-87-1136 |
| アクセス | 阪急宝塚駅下車 約15分 阪急宝塚南口駅下車 約10分 阪急清荒神駅下車 約8分 |
| 住所 | 兵庫県宝塚市武庫川町6−1【MAP】 |
| URL | https://takarazuka-c.jp/bsk/ |
ライター
宝塚のランキング 2026.4.14 - 2026.4.20
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