高槻・島本 TOKK
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高槻・島本 TOKK
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26.03.06
S子
京都生まれ・京都育ち・大阪在住。関西の街ネタ系出版社や仕事情報系出版社に勤務し、関西の街・文化・人・食にまつわる企画の編集・取材・執筆に多く携わった後に独立。

京都と大阪を結ぶ交通の要所として古くから栄えてきた高槻は、城跡や寺社などの歴史遺産が数多く点在するまちです。駅前には商業ビルや百貨店が建ち並ぶ一方、整備が進む公園や山手には広大な自然も広がっています。そんな高槻が、ここ数年「将棋のまち」として注目を集めています。その実像を、街を歩きながら探ってみます。
実は高槻は、江戸時代から「将棋のまち」としての歴史を歩んできました。その証しが、現在高槻城公園北エリアとして整備中の高槻城三の丸跡から発掘された47枚もの将棋駒です。発掘枚数は全国で2番目の多さを誇ります。
戦国時代からの歴史を刻む高槻城は、大坂夏の陣のあと、元和3(1617)年に江戸幕府によって北摂唯一の城郭として整備されました。慶安2(1649)年、文化に造詣の深い永井直清が入城し、その後幕末まで13代にわたり、3万6千石の譜代大名・永井家の居城となります。三の丸は主だった家臣の屋敷が立ち並んでいたエリアでした。静かな城下の一角で盤を囲み、武士たちが思考を巡らせていた情景が目に浮かびます。
こうした歴史的背景を受け、将棋文化を未来にも伝承しようと動き出したのが高槻市です。平成30(2018)年には、全国の自治体として初めて公益社団法人日本将棋連盟と包括連携協定を締結。令和6(2024)年11月には、全国で初めて将棋に関わる条例「将棋のまち推進条例」を施行しました。
伝統文化の継承や学校教育での普及、イベント開催によるにぎわい創出などを柱に、将棋をまちづくりの軸に据えています。

では実際に、今の高槻では将棋がどのように息づき、どのような取り組みが行われているのでしょうか。順に見ていきましょう。
歴史好きなら、まず訪れたいのが「高槻市立しろあと歴史館」です。かつての城下町の面影をとどめる高槻城三の丸跡の一角にあり、戦国時代から江戸時代にかけての高槻の歩みを紹介しています。

1階の常設展示室には「芥川城と三好一族」「高槻城と人」など6つのコーナーが設けられ、資料や模模型、映像を交えながら近世の高槻をわかりやすく伝えています。

もちろん、高槻城三の丸跡から出土した将棋駒も常設展示のひとつ。現在の本将棋につながる小将棋のほか、中将棋と呼ばれる12×12の盤面で各陣46枚の駒を使う古将棋の駒も含まれています。

そのほか、企画展示室では、特別展やテーマを絞った展示が随時開催され、将棋関連の展示も定期的に行われています。

| スポット名 | 高槻市立しろあと歴史館 |
| 時間 | 10:00~17:00(入館は~16:30) |
| 定休日 | 月曜日(祝日は開館)、祝日の翌平日、年末年始(12月28日から1月3日まで) |
| 問い合わせ先 | 072-673-3987 |
| アクセス | 阪急高槻市駅下車 約10分 |
| 住所 | 大阪府高槻市城内町1-7【MAP】 |
| URL | https://www.city.takatsuki.osaka.jp/site/history/list9.html |
関西将棋会館は、現在の「将棋のまち高槻」を象徴する存在です。大阪市福島区にあった旧会館の老朽化を受け、高槻市が積極的に誘致を進めました。
世界に誇る将棋文化を次の100年へつなぐ一大プロジェクトとして、高槻市のふるさと納税制度を活用したクラウドファンディングによる建設支援も行い、令和6(2024)年12月、ついにグランドオープンを迎えました。
西日本の将棋界の新たな拠点となり、多くの棋士が高槻へ移住し、館内ではほぼ毎日のように公式戦が行われています。
外観は将棋の盤をイメージした端正なデザイン。5階には最も格式の高い「特別対局室」が設けられ、和室対局室は中庭「内なる庭」の緑を望む配置となっています。高槻市への移転を記念して名付けられた市民の木『欅(けやき)』という対局室もあり、高槻との結びつきが随所に感じられます。

開館に先立つ11月17日には、完成を祝う記念式典が開催され、当時、日本将棋連盟の会長を務めていた羽生善治九段に加え、藤井聡太竜王・名人らも駆けつけました。
羽生九段が「将棋界もこの場所からさまざまな形で情報発信し、地元に還元したい」と抱負を語り、さらに、羽生九段と谷川十七世名人による記念対局も実施。将棋ファンにとって特別な一日となりました。

1階には道場があり、会員登録をすれば一般の方も有料で利用できます。盤を挟んで真剣勝負に向き合う姿を間近に見られるのも、この会館ならではの魅力です。初心者や子ども向けの教室、棋士・指導棋士による将棋教室も定期的に開かれています。

同じく1階にはオフィシャルショップを併設。将棋にまつわる雑貨が並ぶ店内には、ミニチュアの対局室や棋士のアクリルスタンドも展示され、ファンはもちろん、初めて訪れた人も気軽に立ち寄れる空間です。


会館横には、駒の音をモチーフにした「駒音公園」も整備されています。園内には、古くから高級将棋駒に使われてきた東京都御蔵島産のツゲの木が植えられ、舗装タイルの一部には将棋の戦法ロゴをデザイン。園名板も将棋駒をかたどっています。ベンチに腰掛けると、どこからか駒音が聞こえてきそうな、静かで心地よい空間が広がっています。

| スポット名 | 関西将棋会館 |
| 時間 | 11:00~18:30(道場最終受付・オフィシャルショップは~17:30) |
| 定休日 | 木曜日 |
| アクセス | 阪急京都線高槻市駅下車 徒歩約15分 |
| 住所 | 大阪府高槻市芥川町2-2-6【MAP】 |
| 公式URL | https://www.kansai-shogi.info/ |
※駒音公園については、高槻市が管理しています。
関西将棋会館を中心に、街なかにも将棋の気配が広がっています。阪急高槻市駅とJR高槻駅間の東西約300mに100店舗以上が集まる商店街「高槻センター街」では、高槻でのタイトル戦の開催に合わせ、棋士名が書かれたのぼり旗が掲出されます。

足元にも注目です。
JR高槻駅北側線路沿いの歩道や会館最寄りの商店街である芥川商店街に、将棋漫画『将棋の渡辺くん』の著者・伊奈めぐみさん描きおろしによる2種類のオリジナルマンホールが設置されています。高槻市マスコットキャラクター「はにたん」と将棋の駒があしらわれ、思わず写真に収めたくなる愛らしさです。


さらに駅周辺には、「ようこそ将棋のまちへ」と記された将棋駒型の郵便ポストや、天面に将棋盤、側面に駒や扇子がデザインされたラッピングポストも設置。日本郵便との連携により実現したもので、記念撮影スポットとしてもおすすめです。


また、JR高槻駅西口地下通路は、会館オープンを機に将棋盤のイメージを施した木目調のデザインへとリニューアルされました。


「将棋会館口」という愛称が付けられた最寄りの改札付近には、将棋駒の形をした休憩ベンチが置かれ、夜には「将棋のまち高槻」のロゴ入り照明が光ります。駅北側の歩道には、対局中の棋士・女流棋士の写真をあしらった横断幕がずらり。

さらに市内を走る市営バスでも、棋士写真でラッピングされた「高槻将棋ライナー」を運行。車内まで将棋一色で、移動の時間も将棋ムードに包まれます。

そのほか、商業施設でも将棋をテーマにしたコーナーが設けられているなど、街をあげて将棋を盛り上げている雰囲気が伝わってきます。
高槻では大きな公式戦の開催も続いています。テレビや新聞の報道で「大阪府高槻市」の名が全国へ発信される機会も増えました。対局中に棋士が選んだ昼食やおやつがSNSで話題となり、ファンが実際に店を訪れる――そんな経済効果も生まれています。
令和8(2026)年5月16日(土)・17日(日)には、高槻城公園芸術文化劇場で第84期名人戦第4局を開催予定です。
未来へ向けた取り組みも進んでいます。
市内の小学1年生には、入学記念として高槻産木材で制作した将棋駒をプレゼント。この駒には、風倒木や間伐材が活用されており、子どもたちへの「木育」活動につながっています。さらに、棋士による出前授業や学校への派遣も行われ、子どもたちが将棋に触れる機会が生まれています。

事業者に向けては、地元事業者が将棋にちなんだ新商品を開発する際の支援制度や、将棋会館周辺での飲食店等の創業資金の補助も実施。将棋を通して、歴史、教育、にぎわいがゆるやかにつながっているのです。
「将棋のまち高槻」へは、阪急高槻市駅からのアクセスが便利です。改札を出てエスカレーターで1階へ降りると、正面の6番出口案内に「関西将棋会館」の表示があります。

将棋ゆかりのスポットは、高槻市がまとめた「将棋のまち高槻」マップ(https://www.city.takatsuki.osaka.jp/uploaded/attachment/49660.pdf)を手に歩けば、効率よく巡れます。

歴史ある城下町の記憶を受け継ぎながら、将棋文化を育み、現代のまちづくりへ生かしてきた高槻。街を歩いてみて、関西将棋会館を中心に、商店街や駅周辺、子どもたちの学びの場へと、その広がりが息づいていると感じました。将棋ファンはもちろん、そうでない人も将棋をぐっと身近に感じられます。
将棋スポットで記念写真を撮るもよし、公式グッズを手にするもよし、SNSで話題の「勝負めし」「勝負スイーツ」を味わうもよし。駅周辺にスポットが集まっているので、お散歩がてら気軽に回れます。将棋をテーマに巡ってみると、新たな発見にきっと出会えるはずです。ぜひ一度、訪れてみてください。
| スポット名 | 将棋のまち高槻 |
| 問い合わせ先 | 072-674-7399(将棋のまち推進課) |
| アクセス | 阪急高槻市駅下車 |
| URL | https://www.city.takatsuki.osaka.jp/site/shogi/ |
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